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6月度例会: | 『遺伝子のことを勉強しよう』 |
日 時: | 2004年6月20日(日) 午前10時〜12時半 |
場 所: | 矢部・青少年学習センター 中会議室 |
指 導: | 小野先生、池谷先生(東京都立大)、河原リーダー、澤井分団長 |
参 加 者: | 団員10名、家族6名、リーダー5名、講師2名 合計23名 |
これまでの例会では取り上げることが少なかった生物に関する例会で、最近新聞やテレビなどで耳にすることが多いDNAとか、遺伝子についての勉強でした。講師の小野先生は東京都立大学の先生で、DNAの構造のことなどを研究されています。今日は特に宇宙少年団のために、分かりやすくDNAのことを解説して頂きました。
まず始めに奥村リーダーから「遺伝」と言うことについて簡単に説明して頂いたあと、小野先生から、その「遺伝」のために重要な役割をしている遺伝子や、その中身で生物の設計図に当たるDNAについて、分かりやすい絵を使って説明して頂きました。あいにく分団のパソコンから投影機に送信が出来なくて、折角作って頂いたスライドを大きく写せませんでしたが、パソコンの画面をみんなで取り囲んで、先生の説明に食い入るように聞いていました。大勢でなかったのでこんな状況で説明を聞いて、先生との距離が近く感じられたことでしょう。かなりいろんな質問も飛び出していました。
先生の話を真剣に聞いています |
DNAの模型をつくりました |
説明が終わったあと、紙を使って、DNAの模型を作りました。少し硬い紙にプリントしたDNAの部分品(塩基と言ますが、たったの4種類です)をハサミやナイフで切り取って両端を指定のように山折りや谷折りをして、木の台に立てた真鍮の棒に通し、17ミリに切ったストローを一つごとに入れて重ねてゆきます。次々に重ねてゆくとちょうど次の端と重なって、そこをのり付けすると、全体がらせん階段のようになってゆきます。みんな上手に出来て、先生もびっくりしていました。
説明と模型作りに皆さんが熱中している間に、リーダーたちはタマネギのDNAを取り出す準備をしました。河原リーダーが図解してくれた実験の手順に従って、タマネギをみじん切りにして洗剤と食塩を入れた水と混ぜ、少量ずつに分けて60度まで暖めてから、どんぶりに入れて、スプーンでつぶしました。機械でつぶすともっと楽に出来そうですが、DNAは弱いので、ちぎれてしまうのだそうです。3人で20分位かかってつぶしました。これを茶こしでこしたものが、DNAの抽出液です。ちょうど模型作りが一段落したので、みんなに小さい瓶に入れて渡し、その上にイソプロピルアルコールと言う薬品をそっと加えます。抽出液は下に、イソプロピルアルコールは上に2層になっています。このままそっと置いておくと、だんだん境界の所から白いものが出てきました。これがDNAで、何人かのうちの1人だけは、まりも(毬藻)のように丸まってきました。長い分子なので、うまく切れないでいるとこんなふうに丸まるのだそうです。父兄やリーダーもDNAを実際に目でみるのは初めてでした。できたDNAを取り出して、味見をする予定でしたが、とれたものが少なくて、そこまでは成功しませんでした。
DNAを抽出します |
みんな興味深々です |
模型作りのあとは、先生が持参した分子模型を使って、塩基の形を組んでみました。分子や、塩基など分からなくても玉や棒をつなぎ合わせるのが大変面白いらしく、夢中になっていました。
分子模型もつくりました |
完成した分子模型 |
出来上がった模型はみんな大事に抱えて帰りました。今日の例会のテーマは、小学生には少しむつかしかったかも知れませんが、みんな飽きることなく熱心に話を聞いたり、模型作りを楽しんでいました。リーダーの1人からも、みんなとても熱心だったとの感想がよせられました。完全には分からなくても模型やたまねぎのDNAを見ていると、又何時か、もっとよく分かるようになるでしょう。小野先生から下記のような例会の感想を頂きました。又、育成会の三宅さんからは補足説明も届きました。見て下さい。<澤井>
昨日は、宇宙少年団の集まりにお呼びいただきまして有難うございました。世話役の皆さんと、子供たちと、ご父兄の皆さんが仲良く取り組まれている姿がすばらしいなあ、と感じました。 図を使った説明、モデル作成、たまねぎ実験の全部に子供たちが積極的に参加していました。2時間もの間、小さな子供たちが集中力し続けたことに、子供の持っている能力の大きさを再認識しました。 宇宙少年団の取り組みを通して、科学の好きな若者を育てること、また、子供と大人の信頼関係を強くすることは、現代社会において大切な事だと思いました。
また、機会がありましたら、ご一緒させて下さい。
次回に向けて:紙のDNAモデルの作成において、AGCTの塩基の部分を4種類の色で彩色しておけば、色(塩基)の並べ方で情報を記録する、ということが分かったのではないかと思いました。
遺伝子とDNAの関係についてちょっとした文章を書いてみました。ヒトの遺伝子の数は最近3万ちょっとという線に落ち着いてきたようです。
人間の遺伝子(ヒトゲノム)はA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4種類の塩基(今日作った紙のDNA模型の1枚が一つの塩基に対応します)が30億個もつながってできています。
1ページに3000文字印刷されている本(電話帳のような文字の大きさの本)で約100万ページ、電話帳1000冊分の4つの文字からできた設計図に人間の体を作る情報が書かれていることになります。
4つの塩基がたくさんつながって一つの遺伝子を作ります。人間にはこの遺伝子が3万個から14万個あると考えられています。遺伝子の数の推定値に大きな違いがあるのはDNAをどこまで細かくしたものが遺伝子かという考えに科学者によって差があるからです。
少し前まで30億個もの文字からできている人間の遺伝子の中身が解るとは誰も考えていませんでした。ところが1990年以降高性能の解析機とコンピュータをつないで自動で遺伝子の解析をする機械ができたことから急速に遺伝子の解析が進んで、ここ1,2年で人間の遺伝子がすべて解析できるまでになりました。ただし、解析できたのは遺伝子の中の塩基の並びだけです。その塩基の並びがどのような遺伝子なのか、塩基の中身を入れ替えると遺伝子はどうなるのかはこれからの研究待ちです。でも、すでにいくつかの遺伝子の異常で起きる病気の原因が分かってきました。家族にその病気の人がいるとき、赤ちゃんの遺伝子を調べることで将来その子が病気になるかならないかが解るのです。まだ遺伝子を入れ替えて病気にならないようにするまではできませんが、子供のころから薬を飲むことで病気になりにくくする事ができるようになっています。
さて、人間とチンパンジーの遺伝子の差が1パーセントちょっとしかないという話を聞いたことがあるでしょうか。生き物はすべてATCGの4つの塩基からできている遺伝子を持っています。生命が生まれてから35億年。遺伝子の 変化で様々な生き物が生まれては消え、変化を繰り返していました。チンパンジーと人間の祖先が別れたのがおよそ800万年前。その人間が猿人、原人、旧人、新人と進化して今のヒトになりました。そのチンパンジーとヒトの差が1パーセントちょっとだというのです。遺伝子の数がおよそ10万とすると9万9千が同じで残りの千ほどが違う遺伝子だそうです。
また、違う科学者の発表では塩基レベルで比べるとチンパンジーとヒトの遺伝子は半分以上違うということです。”遺伝子”レベルで比べるということは大まかな特徴(チンパンジーとヒトは見かけが似ているが犬や猫とは似ていない)と いうことを調べるようなことかもしれません。本当の中身の違いを調べるためには遺伝子の中の塩基の並びを調べないといけないということです。30億文字のATCGの4種類からなる設計図がすべて明らかになろうとしています。しかし、その文字の意味する暗号の解読はまだ始まったばかりです。今日取り出したタマネギのDNAにはどんな暗号が隠されているのでしょうか。
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