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相模原グリーンロータリークラブ 第523回例会週報 |
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522回 | 524回 | 2003-04週報目次 |
◆非行少年の現状について 少女院院長 木村 恵子 氏 |
<木村恵子氏プロフィール> 昭和18年 大阪生まれ 昭和40年 大阪女子大学社会福祉科卒業 同年 法務教官として大阪少年鑑別所に就職 その後 関東医療少年院・貴船原少女苑など4箇所の少年院、栃木刑務所・八王子医療刑務所など3箇所の刑務所に勤務の後、3箇所の少女少年院長を務める。 平成15年 退職 「非行少年の現状について」 はじめに 少年による凶悪事件を耳にするたびに驚き、暗澹とさせられ、そして今の子供達は一体どうなっているのかと心配になります。非行の問題は、今後も社会の大きな課題でしょうが、この「非行少年」の実態について少しご理解いただき、地域の青少年育成にお力添えをいただけたらと思います。 非行少年の平均像、現在1年間に検挙される少年(14?19歳)の数は道路交通法違反を除くと約16万人です。まずこの16万人の非行少年の平均像について述べ、次に非行少年のなかでも特に問題が大きく深い少年院在院者に触れたいと思います。 まず年齢では、14.5歳の年少少年が4割近くで最も多く、次が16.7歳の年中少年そして18.9歳と続きます。14.5歳はまだ中学生ですが、大都市部では中学生の非行が非常に多くなってきています。 次に非行内容ですが、85%が財産犯とよばれるもので、万引きやかっぱらい,バイクや自転車盗です。年齢が低いので窃盗といってもスリや空き巣など技術を要することは出来ません。 2番目は、暴行、傷害等の粗暴非行です。殺人,放火,強姦といった凶悪事犯は数字ではほんの少しですが、年々少しずつ増えてきています。これらの少年の保護者についてですが、7割が両親が揃い、9割が生活程度中流以上です。全国の16万人の非行少年の平均像としては、両親揃ったごくごく一般家庭の年少少年が、万引きやかっぱらいのようなことを繰り返しているということになります。そして、これらの少年のうち特に抱えている問題が大きく、少年院に収容して更正のための教育を受けるのは、年間6千人あまり全体の約4%です。非行少年の大部分は、少年院に来る前の段階で、地域のいろんな方の援助を受けながら立ち直っているのが現状です。 2 少年院在院者の特徴 少年院は国立の施設で、全国に53箇所あります。少年院在院者の問題性は当然のことですが、それ以前の段階の非行少年より非常に深刻です。本人の性格や行動性はもとより保護者にも大きな問題がある場合が少なくありません。現在の少年院在院者の特徴は次の4点です。 (1) 集団による非行が増えている グループによる粗暴非行が男女を問わず増えています。少年達は地域で不良交友グループを作り、その中で非行性を深めていきます。グループによる事件は集団心理にはずみがついて、予想以上に重大な事件へと発展します。グループに入ってしまうと親や教師の言うことよりもメンバーの言うことが大切になってしまい、回りの大人の指導が浸透しにくくなります。仲間に言われたからやったのだと責任転嫁し、罪障感が低いのも問題となっています。依存する対象がまだ必要な年齢なのに、家庭も学校もその役割を果たしえず、本人の流されやすい性格もあって不良グループに帰属するのでしょう。 (2)過去に非行歴のない少年が衝動的、突発的に重大事犯を犯す事例が増えている 学校にはまじめに通い、部活動にもきちんと出席している非行とは無縁の少年がある日、衝動的、突発的に重大事犯を犯してマスコミを騒がせることがあります。テレビのインタビューで周囲から「全然、問題のない普通の少年だった」というような言葉が出てきますが、問題がないはずはなく、それまでに非行がなかっただけなのです。「いきなり」「キレル」という言葉もよく使われました。一見、家庭にも学校にも問題なく適応しているように見える少年も家族との関係,学校生活,進路等に悩み、緊張感を高めながらも親や教師等まわりの大人との関係が希薄で、相談したり訴えたり出来ず、問題を抱え込み爆発したのでしょう。 (3)覚せい剤事犯が増えている 女子少年を中心として覚せい剤に手を染める者が多くなったのは、もう随分以前からです。このところ問題になっているのは、年少少年にも使用が広がってきたということです。大都市周辺では、中学生が覚せい剤使用で検挙されることも珍しくなくなりました。 (4)共感性に乏しい少年,上手く人間関係を結べない少年が増えている 昔の少年院在院者に比べて、今の少年は共感性に乏しく人間関係を上手く結べない少年が増えていると少年院職員は感じています。他の人と喜びを共有出来、他の人の痛みを自分のことのように受け止めることが出来るような感性の部分を共感性というのでしょうが、その部分が希薄で、従って人間関係も上手くいかず、煩わしい関係からは逃げてしまう。人間にとって基本的なこと、社会生活を営む上で最も大事なことが、育っていないということでしょう。 おわりに 非行の原因は、決して一つではなく、本人,家庭環境等が複雑に絡み合っているものですが、長い教官生活の中で親とのかかわりに問題のない少年はいなかったように思います。 |