相模原グリーンロータリークラブ
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第500回例会週報

499回 | 501回 | 2002-03週報目次
◆介護について
星が丘在宅介護支援センター 長谷川 愛 様

 皆様はじめまして、星が丘在宅介護支援センターで相談員をしております長谷川愛と申します。
 本日は、500回例会記念とのこと、おめでとうございます。
 また、この度は、社会福祉法人相模原市社会福祉事業団に御寄付を賜り、誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。このような華々しい席にて、皆様の貴重なお時間をいただきますこと、大変恐縮しております。

 それでは、まず初めに、私が勤務しております「星が丘在宅介護支援センター」の紹介をさせていただきます。
 所在地は星が丘になり、デイサービスセンターに併設している施設です。相模原市には18箇所の在宅介護センターが公民館管区出張所管区ごとに設置され、各箇所の設置形態はさまざまです。私共のように通所介護施設併設もあれば、特別養護老人ホーム併設もあります。それらは相模原市から委託を受けて業務を行っています。

 では、実際にどのような業務を行うのでしょうか。高齢者やご家族の保健・福祉・介護等についての「困った!」「どうしたらいいの?」ということについて、身近に相談できる総合相談窓口です。相談者は皆様悩んでおられるため、必ずしも相談内容が明白ではありません。むしろ御自身では収拾がつかないまま来所し、相談員に話しながら内容を整理していくことも多くあります。私たちは、そのお話を伺ったうえで、一体どのような方法で対象者を支援することができるのか色々な道を考え、必要があれば、関係機関と連絡調整し、共同して対応策を検討することもあります。

 さらに具体的な話をしますと、相模原市の行う高齢者福祉サービス(給食サービス、緊急通報サービスなど)の申請代行、介護保険についての相談、福祉用具の展示や使用方法の説明、そして地域支援活動などを行います。この中で、地域支援活動というのは、より多くの地域住民の皆様に諸福祉制度・政策をご理解いただくべく、地域で活動されている団体(老人クラブ・ボランティアグループなど)に出向き、啓蒙活動を行う「地域住民グループ支援」や、日々の生活に役立てていただきたい情報(転倒防止・健康体操・簡単料理教室など)を提供し本人を支援する介護予防教室、介護情報や介護ストレス発散のため家族を支援する家族介護教室のことを言います。

 「介護予防」という考え方は、あまり耳慣れないかと思われますが、要するに元気な高齢者を増やし、少しでも介護になる状態を遠ざけようということです。但し、元気な高齢者にその理解を促すことは、そう簡単なことではありません。なぜでしょうか。

 皆様は、御自分が「高齢者」であるということを喜ばしく思われますでしょうか?私は、将来それを認めたくないと思うに違いありません。客観的に見れば風貌、表情、体力など年齢による様々な衰えは、とても否めないところがあるでしょう。しかし、精神的な部分は決して目に見えるところではありません。自分が「まだ若い!」と思えば、いくら周りに高齢者扱いされても、自分は若いのです。

 私が関わった方でこんな方がおられました。その方は、御夫婦でいつも二人三脚で生活してきました。子供たちは市内在住ですが、連絡がきても決して心配をかけないように、妻がする返事はいつも「大丈夫だから」でした。夫は脳梗塞を患い、後遺症のため片麻痺状態です。若い頃はガス会社に勤務し、性格はとても真面目で、若輩の私にもいつも敬語で会話されます。できることは自力で行いたいという気持ちが強く、決して弱音をはきません。妻もそんな夫の気持ちに沿いたいと極力サービス介入を拒まれました。

 このようなとき、福祉職の立場で考えますと、「すぐに介護保険を利用し、ヘルパーによる家事援助・通院介助、車椅子やデイサービスセンターの利用」など、いかにサービスを駆使できるかということに目がいってしまいがちです。しかし、それは御本人にとってはどうなのでしょう。サービスを利用し、他人の手を借りると言うことは、すなわち「自分はもうだめだ」という結論にあたるわけです。「サービス利用=自己の終焉」という捉え方、それは全く大袈裟な話ではなく、ごく当たり前の考え方として存在するのです。このような考えをお持ちの方は、とても多くいらっしゃいます。結局、この方は、関わり始めてから約一年後、介護保険を利用する決断をし、私に涙ながらにその心の葛藤をお話になりました。

 私は、この方と関わる中で、私の対応はどうだったか振り返りました。私の選択は、御本人の決断のときまで待つ方法をとり、それまではいかにその気力を保持していただけるか考え、また必要な状態がおとずれたとき迅速に対応できるように準備していたのです。第三者の中には、御本人の気持ち以上に客観的な介護ニードがあれば、すぐに介入すべきとの意見もあったでしょう。しかし、私はご本人が語る言葉に「わがままを言って申し訳ありません。でも、聞き入れてくれてありがとうございます」とあったことを忘れません。それは、御本人のわがままではなく、介入しないことが御本人の希望であったと思います。

 高齢者に限らず、私たちは誰もが侵すことのできない「自分の世界」を持っています。これまでは、行政から提供される画一的なサービスに甘んじる時代もありましたが、現在は自分が希望するサービスを選ぶ時代です。私たち福祉に携わるものは、そうした個別性にいかに柔軟に対応できるかということが問われており、それが専門性でもあるわけです。そのためには、利用者の皆様により詳しく、丁寧にお話を伺う必要があります。ただし、伺う内容は、いわゆるプライバシーに関わる事柄であり、そう簡単なことではありません。内容によって、私たち以上に話し易い立場にある方々は、地域の中にたくさんおられます。御家族、御友人、御近所、民生委員などです。ですから、いつ皆様の周りの方からご相談があるかもしれません。そのような時は、どこに相談したらよいのかということを是非覚えていただきたいのです。高齢者の御相談は決して他人事ではなく、身近なことであります。これからも、お近くにそうした方がおられないかという視点をお持ちいただければ幸いです。

 以上で、私の拙い話は終わりにさせていただきます。
 最後になりましたが、本日は佐藤会長をはじめ、高齢者・障害者福祉に関心を持たれ、このような機会を提供して下さいました皆様に心から感謝申しあげます。今後とも高齢者・障害者福祉に対する御理解と御協力を賜りますようにお願い申し上げます。
 御清聴ありがとうございました。


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