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相模原グリーンロータリークラブ 第484回例会週報 |
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483回 | 485回 | 2002-03週報目次 |
◆中世ヨーロッパの音楽と私のイタリア留学 財団学友 辻 康介 様 |
<中世ヨーロッパの音楽と私のイタリア留学> 財団学友 辻 康介 様
オープニングに挨拶代わりにお送りした曲は「来たれバッカス」という曲で、中世ヨーロッパの大ヒットソングです。バッカスという酒の神様をたたえるうたですが、このバッカスさんは、葡萄の房の冠をしていて、いつも酒・葡萄酒を飲んでいるので、顔を赤らめています。ワインを飲むと言うことはおいしいチーズや肉もたくさん食うので、バッカスはだいたい太っております。ちょうど今、ボジョレーヌーボーとか新しいワインの季節ですが、日本でも収穫の秋・食欲の季節です。バッカスは、そういう収穫と酒の神様で、バッカス教という宗教団体の教祖でした。信者には若い女の子が多かったらしいですが、もういつも飲めや歌えや踊れやで、それは楽しい人生を送っていたようです。
今日の共演者を紹介します。近藤治男さんです。 近藤さんはご覧の様な様々な古楽器の演奏家で、最近は自ら楽器を制作しており、ついに近藤治男製バグパイプの試作品ができあがりました。後でまた、楽器について詳しく紹介してもらいます。 さて、今日は中世ヨーロッパの音楽。中世ヨーロッパの世界というと皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか。おとぎ話に出てくるような石畳の町にお城‥あの、高い塔があって塔のてっぺんにお姫様が閉じ込められてて、それを勇者が助けに行くような、ディズニーランドに有りそうなお城、大阪桜宮あたりのホテル街にもありそうな…あのお城ですか‥あるいは、中世ヨーロッパといえば魔女狩り!教会の権力というのがとても強く、人々の自由はあまり認められていなかったような、暗い世界のイメージがあるかもしれません。 ところが、よく見てみると、なかなか自由に満ちあふれた楽しい側面を持ち合わせた世界でもあったようです。その自由をほしいままにしていたのは、特に大学生。ヨーロッパ中世にはイタリアのパドヴァやボローニャをはじめ、あちこちの町に、大学があったのですが、そこの大学生というのは、一つの大学に通ってその町に閉じこもっていたのではなく、あちこちの大学・町を放浪していたようです。今でこそ、EU統合とかで自由に町を移動したり、あるいはロータリークラブの奨学金でいろんなところに留学するのはそんなに珍しいことではありませんが、中世ヨーロッパでは何しろ一つ一つの町が国みたいなもんですし、城壁に囲まれた町の門には門限があったりしますから、まぁ放浪する学生はアウトサイザー、町の中に住んでいた人とはちょっと違う良い思いをしたり出来るのです。 町まであと500メートルというところで、町の門限を知らせる鐘の音を聞いた一人の放浪学生は町の外の木陰で野宿をする。旅の疲れで熟睡しましたが、自然豊かな中世の野宿は、鳥の歌声の大合唱で目覚める。耳を澄ますと、鳥の大合唱の中に、ヤギや羊の声と、こういう家畜が首にぶら下げている鈴の音…どうやら早起きの羊飼いが近くを通り過ぎているようです。が、体を起こしてその音の方を見てみると、羊飼いはなんと女の子!それもこっちに向かって歩いてくる!よし、ここは思い切って声をかけようかと思っていたら、なんと向こうから声をかけてきた。「あら学生さん、こんな所で一人でどうしたの?よかったら一緒に遊びましょうよ」!!と、放浪生活ならではの楽しい朝を迎えた学生さんでした。
曲:羊飼いの娘
こんな学生の物語だけをお聞かせすると、なんだ、放浪学生はただの不良じゃないか、昔のヒッピーか?と思われるかもしれませんが、この放浪学生と一緒に放浪していた奴等には、なんと大学の先生もいた。もちろん大道芸人やら吟遊詩人もいたでしょうが、なんと修道院の坊さんまでいたようで、こういう人たちはまとめてゴリヤルド族と呼ばれていました。 ところで、ロータリークラブの奨学金をもらって留学するというのは、これはゴリヤルドとは正反対。放浪しないようにちゃんと受け入れ先ロータリークラブも決まっていますし、大学も決めてからじゃないと留学できないし、一年間なら一年間で決まった期間で一度は帰ってきて帰国報告をしなければいけない。しかし一歩間違えればゴリアルド留学という人もけっこういまして、一年で帰ってくるはずだった女の子がもうずっと帰ってこない、帰国報告もしないで、忘れた頃に風の便りが届いたら、向こうで結婚してた…とかいうひとは、皆さんのクラブにはいませんか?ま、そういう子は心配の種でしょうが、それはさておき、私もどちらかというとゴリヤルド留学でした。一年で帰る予定が結局四年間、二年目からはアルバイトなど転々としながら…アルバイトはもちろんロータリークラブの留学では認められていませんし、基本的に外国人の不法就労、私の場合はミラノにいたので、やっぱり日本食レストラン…最初のレストランでは厨房に入りました。ここはひどい職場で、何日かただ働きしてやめましたが、一緒に働いてたスリランカ人は一年間日本の農家に研修生活していたとかだったり、パキスタン人のあべさんは日本語ぺらぺら、なんと12年間新橋駅前のフォルクスでアルバイト生活。ちょうど彼が新橋で働いていたのと同じ時期私も新橋駅前のディスカウントショップキムラヤでアルバイトをしていたので話が盛り上がって、「あ、キムラヤ私も良く行ったよ何号館で働いてたの?」「あ、烏森口の四号館で…」などとですね、ミラノの日本食レストランの汚い厨房で盛り上がっていたんですが、あべさんもやっぱり不法滞在・不法就労だったのでもう日本には来れないそうです… では、ここで一曲、ゴリヤルド族の歌で極道の歌。若気の至りで極道渡世の掟に従ったが、年をとってなんとか道を正そうとしました…という歌です。 曲:極道渡世の掟
ではここで、近藤さんに楽器を一つ紹介してもらいましょう。 では、もう一曲、ゴリヤルド族の歌ですが、極道系の歌ではなく、腐った世の中を嘆く歌。真面目さは地下で眠り、道徳は葬られた。けちが羽振りを利かせ、真実がうそをつき、みんなが掟を破り、不法が正当とみなされている…
曲:見よ敬虔は葬られ
イタリア・ミラノ留学といっても、ゴリヤルド留学だといろんな話があるのですが、時間も限られていますし、一つだけホストロータリアンとの思い出をお話しします。私のホストロータリアンは若い弁護士でして、弟も弁護士、おじいさんの代から弁護士事務所を引き継いでいる、なかなかの家柄。事務所には真っ赤なスーツの金髪のお姉さん。ロータリークラブで留学して良かったと言うよくある話に、例えば銀行の口座を開くのが外国人にとってはとても大変なことなのだが、ロータリアンに頼んだら一発だったとか、滞在許可証もロータリアンを通して簡単にとれたとか実に実際にある話のようですが、私のロータリアンはなんといっても弁護士!心強い!が、何にも手伝ってくれなかった…一度、この兄弟ともう一人日本人で先に留学していた歌手の人と食事に行くことになって、まぁ、せっかく日本人が二人いるから日本食レストランへということで、行ったんですが、しっかり割り勘だった。日本食レストランはけっこう高いですからね…と、いわゆる素晴らしいロータリアンとその留学生のという皆さんの期待を早速裏切ってしまいましたが、実際問題、このロータリアンはとても若くて、私と大して年も変わらない、弟は多分私より若いので、まぁ友達ですね。もちろん私は、「ロータリアン」の期待が裏切られたと言って避難する気なんて全然ありません。むしろ、感謝している。一緒に飯を食った夜、じゃあこれからどこへ遊びに行こうかとなりまして…あ、ビリヤードでもやるか?というのです。が、私はビリヤードはやらないし、もうちょっと気取らないところが良いなぁみたいな話をしていて、じゃぁ!と行ったところは、ミラノの中心街をはずれた街道沿いの…バー、それもトップレスバー…ま、詳しいことはまた別の席で皆さんにお話ししますが、四年間の滞在中にこういうところへ行ったのはこれっきりでした。 くれぐれも、私はこのロータリアンを避難する気は全然無くて、その逆、私の留学がゴリヤルド留学として豊かになったのは彼のおかげです。私がゴリヤルド放浪学生だとしたら、彼は、大学の先生のゴリヤルドとか、お坊さんのゴリヤルドというところでしょうか。 では、もう一曲、酒場の歌。酒場にたむろして博打を打つゴリヤルドの歌ですが、乾杯の一杯一杯があらゆる人々に捧げる祈りであり、一振り一振りのサイコロに人生を掛けている、真剣勝負の酒飲みなんだという歌です。 曲:酒場の歌 あまり時間がありませんが、ここでもう一つ楽器を紹介しましょう。近藤さんの新商品、完成されたばかりのバクパイプの試作品です。 では、最後に、エピキュロスの歌。エピキュロスは快楽主義者として知られた人で、バッカスのように一種の教祖だった。が、快楽主義ですから、その神殿はおいしい香りに包まれた台所、そのご本尊は、胃袋、胃袋は胃袋のために生き、一杯になったら眠る。 曲:エピキュロスは高らかに叫ぶ。 終わり |