相模原グリーンロータリークラブ
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相模原グリーンロータリークラブ
第625回例会週報

624回 | 626回 | 2005-06週報目次
◆NPO法人「畑と田んぼ環境」
再生会設立に向けて
五色塾 代表 小川 誠 氏

生き物との共生を実現した五色塾の畑と田んぼ

五色塾は今年で8年目を迎えていますが、大島の1.5反の畑はヒキガエルやトカゲやオケラなど、生き物の豊かな草地の自然環境が蘇っています。そこで取れる野菜の味は大変おいしいと、多くの方々から言われます。畑は野菜作りの場であると同時に生き物との共生が可能な自然環境でもあることが実証できたと感じています。また、生き物の豊かな田畑の農作物が本当の意味で一番安全で安心できるということもわかってきました。

一方、田んぼではご存知のように、不耕起で、同じく生き物との共生を図った米作りを展開しています。現在畑が約3.5反、田んぼが約1.5反、合計で5反の田畑を有していますが、日々の農作業を通じて人間が上手に手を入れることによって、丁度里山のように、畑は自然の草地以上に、田んぼは自然の沼地以上にそれぞれ生物多様性を保証する二次的自然環境として再生することが可能であることがわかってきました。

寄宿生活と環境再生型農業の組み合わせは青少年の健全育成に有効

また、五色塾の本業である、青少年の自立支援という観点からは、共同生活と農作業の組み合わせが不登校やひきこもりの青少年の自立に大いに役立つことは年々手応えが確かなものとなりつつあります。寄宿生活を長く続けた者にはいくつかの共通する特徴があります。例えば、つべこべ言わずにサッと動けること、辛い仕事やいやな仕事でも忍耐強く続けられること、自分のベストを尽くし、成果をみんなで分かち会えること、おおらかで明るいこと、落ち着いて行動すること、他者に気を配り、気を使うことなどです。そして、環境再生型の農業は塾生たちに「自然を再生する側に立っている」という自覚を目覚めさせ、それが生きる自信に繋がっていることも少しずつ感じられるようになりました。NPO法人化することによって、このような体験の間口を広げる仕組みを考えていきたいと思っています。

都市住民に農業体験の場を提供する意義

家族単位で集う「触れ合い農園」は8年前から、不耕起移植栽培体験教室は3年前から継続していますが、環境再生型農業の場が単に農業体験の場としてだけでなく、同時に大人の癒しやくつろぎの場、和やかな交流の場となり、また子供たちの自然体験の場としても活用できることもわかりました。自然から遠く離れてしまった都市住民にとって、都市近郊の農地で週末のひと時を過ごすことは手ごろな健康レジャーとして望む人が急増していますが、そういった場は驚くほど限られていているのが現状です。五色塾は実践本意できたので、あまり広報活動をしてこなかったのですが、そういう方々にもっとこのような体験の場があることを広く知らせることが必要だと感じています。

そういった健康な田畑で自分達の手で農作物を作り、それを食することは、家族の健康を増進し、家庭の団欒を豊かなものにし、ひいては心豊かな農的生活を実現することになります。そして、共同作業を通して農的生活を送る者同士の仲間意識も芽生えます。畑や田んぼが都市生活で切り裂かれた人間関係を緩やかに優しく結びなおします。これは和やかで、穏やかな社会の人間関係の形成に寄与することになるのではないかと思います。

NPO法人化で農地借り入れが容易になる

一方で、農地の現状はというと、相模原市だけを捉えても、生産者の高齢化と後継者不足から、農地の耕作放棄と荒廃は急速に進みつつあります。それが、農地の不法転用や産業廃棄物の不法投棄の原因ともなっていて、地域全体の環境を悪化させる事態になっています。また、トラクターで耕うんだけしている農地は一見綺麗ですが、そこは除草剤をまかれたところと大差はなく、生き物のほとんど生息しない砂漠地帯同様の状態にあります。おりしも、農業経営基盤促進法改正案が今国会で可決、通過したため、今後はNPO法人の農地借用が可能となります。そのような農地の拡大は、農的生活を望む一般市民の参加を容易にし、そこに健康な野菜、健康な家族、健康な生活、健康な循環型社会という環が形成される可能性が出てきます。

「畑環境」・「田んぼ環境」という意識を育てよう

自然環境としての畑を「畑環境」、そして自然環境としての田んぼを「田んぼ環境」と定義したいと思います。ところで、世間一般では自然環境と言えば、空、大地、森、山、川、海などを思い浮かべはしますが、畑や田んぼを思い浮かべることはまずありません。日本全土で470万ヘクタールもの広大な面積を有する田畑のかなりの部分は農薬と化学肥料で汚染された大地で、生き物は乏しく、事実上そこは野外農作物生産工場とみなされています。ですから、「田んぼ環境」とか「畑環境」という見方をしている人は非常に限られています。しかし、今こそそのような環境意識を普及させて、日本列島の環境保全活動に新しい視点を提供し、新しい風を吹き込むときがやってきていると感じます。

NPO法人「畑と田んぼ環境」再生会設立を決意

ここに至り、今までの五色塾の実践を踏まえて、環境との調和、生き物との共生を目指す農業ないし農的生活をより広く社会に広めていくために、賛同者を募って、NPO法人「畑と田んぼ環境」再生会を設立していくことを思い立ちました。一言で言えば、相模原の農地から自然環境を再生していく活動です。それを農業寄宿生活と組み合わせて一方で青少年の健全育成の場とし、また一方では市民に農的生活を提供して、地域の新しい人間関係を作っていく活動です。