相模原グリーンロータリークラブ
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第545回例会週報

544回 | 546回 | 2003-04週報目次
◆こどもの虐待について
西迫 真 会員

 子供の虐待とは弱者である子供に対して強者である大人の著しい権利侵害であります。
  
 「虐待」と「しつけ」のちがいは?
 その線引きはないのかもしれませんが、「子どものために」と「しつけ」るつもりの親の行為も、そのやり方によっては「虐待」となってしまうこともあるのではないかと思われます。「しつけ」なのか「虐待」なのかを見分けるには、その親の行為によって「子どもが長きにわたって心身にダメージを受けたかどうか」にあります。たとえよかれと思ってしたことであっても子供にとって有害であればそれは虐待なのです。どれほど「厳しいしつけ」であったとしても、「しつけ」という限りは親の怒りは伴わないものであり、親の身勝手さにおいて湧き起こる感情から発せられる言葉が継続的反復的に与えられるとすれば、それは「虐待」と言えるのではないかと思われます。

児童虐待防止法
 日本では平成12年に「児童虐待の防止等に関する法律」が公布、施行されました。「保護者のいない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見したものは、これを福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならない」(児童福祉法25条)とあります。
 この法律により家庭という閉鎖空間に隠れていた多くの虐待が表面化してきました。児童相談所への虐待相談件数は去年で2万3000件と5年前の4.4倍にも膨れ上がり、大阪府岸和田市の中学生虐待など子供の生命に関わる重大な事件も相次ぎ、児童虐待防止法改正案が国会で成立をめざす方針となっています。虐待の芽をより多く摘むためにこれまでの「虐待を受けた児童を発見した者」から「虐待を受けたと認める児童を発見した者」に拡大しました。また、虐待が疑われ保護が必要なのに親の抵抗で家に入れないケースでは児童相談所長が地元警察署長に通告する義務を負います。警察署長命令で警官が現場へ行き「児童の生命、身体に重大な危害が生じる恐れがあり安全確保のためやむを得ないと認めたとき」に限って相談所職員などの立会いの下で強制的に家庭に入ることが出来ると規定しています。
虐待の種類

(身体的虐待)児童の身体に外傷を生じるような暴行を加えること。 
 例えばたたく、ける、つねる、頭をなぐる、かむ、しばる、投げ落とす、タバコの火を押し付ける、熱湯をかけるなどです。
 特徴として虐待によるあざ・打撲は1箇所であることはまれで全身に多発し、新旧の創傷が混在しています。
(ネグレクト)子どもに適切な衣食住の世話をしないなど、子どもを放ったらかしにしておくことです。
 例えばごはんを食べさせない、衣服をかえない、風呂に入れない、危険な場所に放っておく、家に入れない、家に閉じ込める、重大な病気になっても病院につれていかない、乳幼児を家に残したまま度々外出する、幼児を車の中に放置するなどです。身体的虐待に次いで多く報告されています。
(性的虐待)子供ににわいせつな行為をすること、させること
 子どもへの性的行為の強要、性器を見せたり性交を見せること、ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要するなどの行為をさします。10-14歳が多く、主たる虐待者は実父が一番多く父親の立場にいるものが過半数をしめています。多くは日常的・習慣的に繰り返されていることが多く。家族、特に母親は女児の微妙な変化を早急に気づき勇気をもって対応することがもっとも大切です。
(心理的虐待)子供に対する心理的いじめのことで、子どもを情緒不安定にさせたり、心に傷をつくります。例えばまったく子どもの存在を無視したり、大声をだしておびえさせたり、子どもの心を傷つけるようなこと繰り返し言うことです。(おまえなんか生まれてこなければよかった・おまえなんかいなければ・おまえは馬鹿だ)心理的虐待は立証されにくく発見が遅れるケースが多いようです。

 虐待に関しては以上のような分類がなされていますが、ほとんどの場合複数の虐待が合併しています。この分類に当てはまらないからといって虐待でないとは言えません。問題は子供が安全で適切な養育を受けているかどうかにあります。

なぜ虐待が起こるのか?

社会からの孤立

 核家族などで、日中話し相手がいないとか、身近に交流できる相手や子育ての悩みを相談する相手がいないなど、自分の家の中での生活が中心で、地域から孤立することは、育児不安や養育上の混乱を誘発しやすく、虐待につながる可能性が高いと言えます。また、家庭が地域から孤立していると、虐待の発見が遅れたり、虐待を深刻化させてしまうことにもなります。 

家庭の状況
 夫婦関係が不安定で、一方が支配し、その配偶者が服従するという関係の中では、配偶者が虐待を黙認するということがしばしば起きます。また、若くして結婚し、心理的に親になりきれない場合やアルコール性疾患、精神的、経済的な問題を抱えている場合などは、生活上の不満や子育てからくるストレスで虐待が起こりやすくなります。

親の生育歴の問題
 子どもを虐待する親の中には、親自身が虐待を受けて育った場合が多いと言われています。それまでの生育歴から、人への信頼感が持ちにくく、また自己評価も低いなど、安定した人間関係が持ちにくくなっている人も多く見られます。暴力を受けた体験は、自分が子どもを育てるときに無意識のうちに再現しやすく、子どもに暴力をふるいやすくなります。

子ども自身の要因
 子どもが慢性疾患を持っていたり、障害があったり、よく泣いたり、食べなかったりするなどのいわゆる「育てにくい子」「手のかかる子」の場合は、親がその対応に追われ、余裕がなくなり、子どもに拒否的感情を持ち虐待をしてしまう場合があります。
親と子どもとの関係

 子どもへの虐待では、子ども全員に虐待をするのではなく、しばしばきょうだいの中の特定の子どもだけが対象となる場合があります。例えば、未熟児のため出生直後から長期入院していて、その間、母子分離の状態にあると、その子どもに愛情を感じられなくなっていたり、きょうだいを比較してしまい、どうしても受け入れられなかったりすることが原因で、虐待に結びつくことがあります。

 実際に虐待を疑われるケースに遭遇した場合どのようにしたらよいか。

 虐待は仕事の関係上、児童福祉施設の職員・保健士・学校の教職員・医師が発見しやすい立場にあります。しかし、子供の虐待のほとんどが家庭内で行われているため虐待の早期発見には近隣知人などの一般住民からの通告が重要な役割を果たしています。実際に虐待通告の15%が一般市民によるものです。

 虐待を疑われるケースに遭遇した場合は勇気をもって児童相談所に通報してください。この地域では淵野辺にある相模原児童相談所(042−750−0002)が窓口になります。通報を受けると児童相談所は子供の生命を守り安全を確保することを最優先にして速やかに調査を開始します。通告は電話による口頭で行うだけで法的には問題ないですが、同時に、通告書を作成して、児童相談所所長宛に提出(あるいは郵送)する方が確実に児童相談所を動かすことにつながります。通告書はインターネットより引き出せます。その際におそらく、もし虐待でなかったら とか あとで恨まれないか など心配されるケースが多いようですが、虐待は確定してからでは遅いのです。100%断定できる例はむしろ少なく、虐待を否定できなければ、もしくは疑ったら通告が必要なのです。

 アメリカの虐待数は日本に比べて数字の差は圧倒的ですが、それは、アメリカにおける虐待に対する厳しい姿勢が背景にあるといいます。アメリカでは、子どもを車に残したまま、スーパーに買い物に行ったり、ベビーカーにのせたまま、その場所を離れる、という行為も「虐待」になるそうです。もし勘違いだったら困る、と思うかもしれませんが、何よりも子どもの『命』の問題です。確かに、通報して自分の勘違いだったらどうしよう、と思うのは、実は「自分」を守っているのであって、「子ども」を守っているのではないのです。