相模原グリーンロータリークラブ
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第515回例会週報

514回 | 516回 | 2003-04週報目次
◆日本とアメリカのビジネスの違い
小川 忠久 会員

 私が始めての海外勤務でアメリカを訪れたのは、昭和49年(1974)の確か7月頃でした。その前は住友銀行日比谷支店で営業を仰せつかり、朝の9時から夕方5時頃まで外回りをやっていました。
 当時週休はまだ1日で月曜から土曜までの勤務とかなりハード、一方で高い業務目標をはり付けられ四苦八苦の毎日でした。そこへ突然の米国勤務それも風光明媚なサンフランシスコですから、万事が反対で最初は気の抜けたような感じでした。
 週休2日制、ゆったりと休みが取れ、又、1日の勤務も遅くても7〜8時頃まで。新しい仕事を覚える事を強いられはしましたが、上からのプレッシャーもあまり無く悠々と仕事が出来ました。日本では平社員でしたが、アメリカでは最初から管理職、机・いすも大きく、もちろん給料も十分で待遇面での日米の差は歴然でした。
 そんな状況で私の米国でのサラリーマン生活は始まりましたが、今日は最初にこの体験を通して分かった日米社員事情の違いをご披露し、後半では経営や意識の違いなどに簡単に触れてみたいと思います。

「日米社員事情?サラリーマン・OL気質」
 まずアメリカはエリートと非エリートの差がはっきりとしています。会社は一握りのエリート幹部がその他大勢をグイグイと引っ張る感じで、その他大勢はあまり覇気が無く自分の与えられた仕事をただ黙々とこなすといった印象が強いようです。決められた仕事以外は一切手を付けず、上司がちょっと別のことをやらせようと思ってもなかなか乗ってきません。一方でおかしいのですが、他人が自分の仕事にちょっかいを出そうものなら、It'my jobといって怒ります。それなりにプライドがあるようです。日本的なお茶くみなどさせようものなら今度はIt's not my jobと大変でした。整理整頓もあまり得意ではなく、掃除なども一切せずみな専門の掃除夫にまかせきりです。(日本も最近は大きなオフィスですとこの様になってきていますが)。
 勤務時間も朝はちゃんと来ますが、夕方も大方の人は5時なら5時にきっかりと帰ってしまいます。ひどいのは机の上に帳簿などを開いたまま帰ってしまうのがいました。又頼まれた仕事が終わってなくても帰ろうとします。したがって頼んだ人は急ぎ仕事だと、残業をして終わらせるよう説得するのが一苦労でした。
 勘定の締めも、日本の場合1円でも合わないと、判明するまで突合作業を延々としますが(最近は知りませんが)アメリカではそこそこで終了し、余ったお金は仮勘定に入れておき、今度足らなくなったらそこから出して穴埋めするといったようで、かなり大雑把でした。
 一苦労なのが勤務評価で、これは大変でした。日本のように一方的に上からの評価ではなく、一人一人に評価シートを作りこれに基づき対話をするといった手の込んだもので、相手も納得がいかないとドンドン反論をしてき、最終的に了解のサインをもらうのに往生することもしばしばでした。

「日米経営風土の違い」
 以上お話した海外勤務や帰国後に配属された国際部門で働いたこと、又現在2つのベンチャー企業の監査役をお引き受けして学んだこと等から日米の経営の相違点について若干述べたいと思います。といっても私は専門家ではありません。私が最も興味をひかれる2?3のポイントに限りお話したいと思います。
 まず会社は誰のものかという大きな命題があります。日本の大手上場企業ですと会社はまず社員のものであり、株主はその後に来るといった考え方が伝統的でした。大会社の社長はたいした株も持っていないのに、あたかも会社のオーナーのように振る舞い、株主の権利は軽視されがちでした。アメリカでは対照的に株主の力は大きく、社長といえども利益を上げなければ簡単に更迭されることもあるようです。日本においても近年、景気の長期低迷や様々な変化のなかで株主利益がより重視されるようになり、経営者も株価の動向には従来以上に敏感になっているようです。
 次に起業すなわち新たに事業を起こすことについてですが、最近でこそ日本においてもベンチャー、アントレプレナー、新興市場等の文字が新聞、TVを賑わし株式公開で大金持ちになった人も多く出ていますが、これはアメリカの十八番でしょう。もともと起業家精神が旺盛で、ハーバード、スタンフォードといった有名大学やビジネススクールを出ても必ずしも大企業に入るわけではなく、教授や仲間と小さな会社を起こしたりします。チャレンジ精神が尊ばれる気風があるようです。寄らば大樹の陰の日本とは違うところです。

 最後になりましたが、しばしば議論されることに日米企業どちらが優れているかといったのがあります。今はアメリカ企業がもてはやされて日本は分が悪いようですが、日本も一時はジャパン・アズ・ナンバーワンとか言われていた位ですから決して駄目というわけではないでしょう。「物作り」はやはり世界最高峰でソニー、ホンダ、トヨタなどアメリカでもブランドの確立した超優良企業もあります。さて我が身をおいた銀行はどうでしょうか?バブル時代は米銀を圧倒していましたが、いまや残念ながらグローバル・スタンダードのアメリカ流に席巻され、グウの音も出ないようですね。まあこれからも、日米の企業は競争・協力しながらしのぎを削り、追い越したり追い越されたりしていくのでしょうか。