三宅島の火山活動は、全体としてゆっくりと低下してきていますが、最近半年程度は低下の割合が緩慢になっています。今後の火山活動の推移を見極めるためには、引き続き観測データの推移を見守る必要がありますが、火山ガスの放出は当面続くと考えられます。
三宅島の山頂火口からの火山ガスの放出量は長期的には減少してきています。そのうち、二酸化硫黄についても、放出量はゆっくりと減少し、最近数ヶ月では、1日あたり3千?1万トン程度と概ね横ばい傾向となっています。
火山ガスの組成に顕著な変化は依然認められず、マグマ中のガス成分濃度や脱ガスの条件などに大きな変化はないと考えられます。
火山灰の放出を伴う小規模な噴火は2002(平成14)年11月24日以来観測されていません。
全磁力観測では、2002(平成14)年7月頃から山頂火口直下の温度低下を示唆する帯磁傾向が観測されていますが、2003(平成15)年に入ってからその傾向は鈍化しています。
火山性地震の活動に大きな変化はありませんが、連続的に発生している火山性微動の振幅は小さくなっています。
活動の開始以来観測されてきた三宅島の収縮を示す地殻変動は、収まっています。
三宅島では、現在でも局所的に高い二酸化硫黄濃度が観測されることもありますので、風下に当たる地区では引き続き火山ガスに対する警戒が必要です。また、雨による泥流にも引き続き注意が必要です。
三宅島火山ガスに関する検討会報告(概要)
1 検討会の設置目的
三宅島の火山ガスがどのような状況になれば避難島民の帰島が可能になるのか、安全確保対策の面から科学的に検討する。本検討会は東京都と内閣府が共同で設置。
2 三宅島火山ガス (二酸化硫黄)の特性
- 概 況
山麓では、最盛期は10ppmを超える値が観測されていたが、最近は5ppmを超えることはほとんどない。火口から近い山腹では、20ppmを超える二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、一年を通して西寄りの風が吹くことが多いため、東部で高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
- 火山ガスの放出量
二酸化硫黄の放出量は、昨年夏頃は、1日あたり4千?1万トン程度だったものが、最近数ヶ月では3千から1万トン程度である。火山ガスの放出量は、大局的に低下を続けていくものと考えられる。(火山噴火予知連絡会)
- 風向・風速と二酸化硫黄濃度
上空の風の風下側で高濃度となることが多い。風速が7?19m/s程度になると、高濃度のガスが多く観測されるようになる。
- 噴出口からの距離と二酸化硫黄濃度
島の東部で高濃度の二酸化硫黄が観測されているが、これは山頂の噴出口からの距離が近いためであることも考えられる。
- 降雨時の二酸化硫黄濃度
降雨時は、二酸化硫黄が高濃度となることは少ない。これは、降雨により二酸化硫黄が吸収されてしまうことによるものと考えられる。
- 高濃度になる時間帯
三宅島空港観測点では、日中に比べ夜間の方が濃度が高くなっている。しかし、他の観測点では明確な傾向は見られない。
- 短時間に高濃度となる状況
高濃度が観測された時の濃度変化を見ると、必ずしも徐々に濃度が高くなるばかりではなく、急激に高濃度となることもある。
- 環境基準との比較
環境基準の日平均値0.04ppmについて見ると、島の東側ではこの基準を超える日の割合が1年間に40%?57%と高く、比較的濃度の低い三宅支庁観測点においても7%程度あり、いずれの観測点も環境基準に達していない。
3 健康影響から見た二酸化硫黄濃度の目安
- 基本的考え方
環境基準は、火山噴火のような自然災害による二酸化硫黄濃度については考慮されていない。このため、帰島する住民に対するきめ細かい配慮を前提に、健康影響に関する住民とのリスクコミュニケーションを十分に行った上で、ある程度のリスクの受容が許されれば、環境基準とは異なった対応が可能であると判断した。
二酸化硫黄による健康影響については、直ちに健康や生命への影響はないが、長期間の曝露を受けることによって身体に生じる長期的影響(慢性影響)と、瞬間的あるいは短時間に高濃度の二酸化硫黄を吸入することによって身体に現れる短期的影響(急性影響)について考慮した。
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