皆さんこんにちは、今日の卓話は、私がこの夏、今年度の国際奉仕委員会の委員長として、「NESA」の総会に恩田さんと参加した報告と、NESAの活動を通して私なりに考えた「国際奉仕」をテーマに卓話をしたいと思います。
ネパール教育支援の会NESAの総会が8月29日に小田原国際交流ラウンジで開催されました。NESAの活動を支援している当グリーンクラブとしても、その活動内容を把握し、今後の奉仕活動につなげるべく恩田さんと2人で参加して来ました。ネパールの貧困層の人たちの自立を支援しているNESAの活動報告は大変興味深いものであり、また、国際奉仕のあり方のひとつの形を考えさせられるものでした。
ネパール教育支援の会「NESA」については、去年の2月の例会に恩田さんの友人であるの役員の鈴木さんがグリーンロータリーで卓話をされましたが、このNESAに対し、グリーロータリーは2008年度に10万円の寄付をして活動を支援し、今後も継続的な支援を予定しています。
まず簡単に「NESA」について、鈴木さんからお聞きした事、総会資料、そして、ホームページ等から知り得た範囲で説明させていただきます。
NESAとは Nepal Education Support Association の頭文字をとったもので、ネパールの教育支援の会です。1996年に日本とネパールで同時に設立されました。
ネパール連邦民主共和国は、南はインド、北は中国に挟まれ、ヒマラヤ山脈及び中央丘陵地低と南部のタライ平原を擁し、世界最高峰エベレストの登山の玄関の国として知られる国です。人口は約3千万人、最貧国のひとつといわれ、国民の90%は農村で暮らしていますが、自然災害、病気等で食べて行けなくなった大人や子供たちの多くが、首都カトマンズゥ等に追いやられています。このような社会的弱者に対し、貧困なネパールでは支援の手があまり差し伸べられていないのが現状です。
NESAはこのような人たちに対し、次の3つの形態で支援活動をしています。@貧しい女性たちに裁縫教室を提供する。A農村地域に山羊.豚の貸出制度を提供する。B人道支援として、ハンセンキャンプへの衛生品の提供と少数民族学校への文房具の提供等です。
私たちグリーンロータリーの寄付は主に@の裁縫教室の運営を中心とした活動に活用されているとの事です。そこで、今日はこの分野の支援について話したいと思います。
NESAは「手に職をつける」ことが自立の第一歩と考え、最も貧困な女性たちを対象に裁縫教室を設立しし運営しています。そして、120名以上の卒業生がいるそうですが、これらの女性たちの中には縫製会社に就職したり、村に帰ってお店を持った人もいます。しかし、修了生達の多くにとっては、実際に店舗を持ったり、縫製の技術を生かし、注文をとったり等の本格的自立はまだまだ多難な状況です。そこで、NESAでは、さらに支援の実践を進めるために、卒業生たちが注文服を作りながら、より熟練した技術を習得するための専攻科の設立も行いました。
NESAは、支援のための送金を永遠に続けるのではなく、将来的には自立したネパールの人によって、経済的にも指導的にも自主運営できるように様々な企画を立てて実行しています。
私が、今回総会に出席して心を動かされたことのひとつは、NESAの支援のスタイルは「直接支援活動」だということです。NESA設立は当時、現地のネパール事務所で、ネパール人の理事が主導的に職業訓練施設を創設運営していました。しかし、基金を送金する日本のNESAの思いが現地の事務局になかなか通じず、効果的な支援活動が困難な状況となってきました。NESAの活動の中心である貧困層の女性を対象にした裁縫教室も、この10余年の間には、現地スタッフとの間で齟齬、不信、紆余曲折があった事が、総会での報告や資料からうかがい知られました。
NESAの総会資料の活動報告は、総会の資料にありがちな、おざなりなものではなく、克明な年間活動記録に加え、会長の岡田氏の誠実な飾らない挨拶、ネパールに在住14年の事務局長の所信、今後の課題、反省点、今後の取り組等が真剣に書かれ、部外者の私にとっても大変興味深いものでした。それだけ、発展途上国への効果的な支援をすることが難しいということなのでしょう。
NESAは、今日では「直接支援するスタイル」を方向付け、効果的な支援を目指して、現在は援助の主軸を「パタン工房」という施設に移しつつあります。ここでは、より熟練した職業訓練のための教室及びNESA製品の販売を手がけています。工房の代表はカトマンズ事務職員であり、裁縫教室の裁縫教室の卒業生もある女性で、修了生の開店指導、自立支援等の困難な分野を引き受けてくれているそうです。外国に対しての支援が実際に効果を上げる難しさは、他の支援団体とも共通する課題ではありますが、NESAは、問題点を検証し、現実に即した対応で解決し、楽しみながら質の高い支援活動を継続させている組織であるとの印象を受けました。
総会の会場で、このパタン工房での実際の活動の報告が朗読されましたが、なかなか感動的でしたので、簡単に紹介します。
2001年から2007年まで続いた内戦時代、反政府軍の「マオという武装勢力の支配する区域で育ち、内戦終了後、戦闘地域から移住し現在は首都カトマンズのバラック郡に暮らす女性の話です。
革命思想に凝り固まり、学校教育を受けていなかった23歳のこの女性がパタン工房に通い始めましたが、当初は授業も受けず、革命の歌を歌い、シャワーを浴びただけで帰っていくような毎日でした。やがて、少しずつ頑な態度を解き、みんなと一緒に学び始め、ネパール語の50音と数字が書けるようになり、現在は、ミシンの操作は誰よりも上手になってきているということです。
内戦時代には、彼女の生まれ育ったマオ支配の地域の村の住民と、他の地域の住民の接触は同じ国ではあっても戦闘という形以外はほとんどまれであったそうです。
「そのマオ村の住民であった女性が工房で学ぶ中で、都市の住人に心を開き、ささやかではあるが10年に近い民族間の空白を埋めようとしている。そして、他の地域の住人も、マオ村の実際の姿を知るようになってきている。時間がかかる作業だか、ネパールは今、ひとつの国になり始めている。」という報告に、NESAの自立支援がこのような形でネパール人同士の理解と共感を育て、国づくりに貢献しているのだと感じ、大切なことを教えられた気がしました。
海外支援は実際にどれだけの活動実績が上げられているか検証が難しく、多くの場合問題ありとされています。今回、NESAの総会に参加し、わがクラブがNESAに支援した10万円がネパールの貧困層の女性たちの自立の一助となったことを確信しました。そして、自己満足ではない奉仕、支援というものの大切さと難しさをあらためて考えさせられました。
また、NESAのモットーは「楽しみながら支援しよう!」ということです。支援をしながらネパールに友達をつくり、もうひとつの故郷を作りましょう!ということです。そして、友達訪問のネパールトレッキング旅行を企画し、ネパール訪問を楽しんでいるそうです。
私たちロータリーの国際奉仕はまた形態が違う奉仕の仕方ではありますが、私たちの援助、寄付等がどのような形で役に立っているのかを、時間をかけて見てゆく必要を感じました。奉仕は見返りを求めるものではありませんが、その成果、結果はしっかり把握しなければならないと思います。
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