まずお話ししたいのはスマイルの根拠、スマイルをするというのはどこに規定されているのか、ということです。意外なことにスマイルについてはどこにも規定がありません。国際ロータリーの手続要覧にも、当クラブの定款にも細則にも見当たりませんでした。
ではなぜ、我々は今、例会の毎にスマイルを集め、スマイルを発表しているのでしょうか。どこからこれが始まったのでしょうか。
「ようこそロータリーへ」(佐藤千壽氏著)という本によれば、1936年7月、大阪ロータリークラブでニコニコ箱開始ということです。
日本で初めてロータリーが出来たのは東京ロータリークラブで1920年ですが、大阪ロータリーでニコニコ箱が開始される1936年まで16年間あり、この期間はスマイルがなかったということになります。更にいえばスマイルについての規定はどこにもないので、大阪ロータリーが始めても、当初はそのクラブだけだったと思われ、全国のロータリーでスマイルが定着するまでは更に期間を要したことと思われます。
そうすると、当時のようにスマイルはしない、という選択肢もあり得ます。うちのクラブはスマイルをよそう、としたって別に構わないわけです。もし、このようにしたらどうなるでしょうか。2つの問題が生じると思います。
第一に、スマイル発表を通じて会員の近況をある程度知ることができるのですが、そうした機会がなくなり味気ない会合になってしまいかねません。またスマイル委員が機知に富んだ方ですと、大変楽しく盛り上がります。そうした例会での楽しいひと時がなくなってしまいます。
第二に、スマイル収入がなくなりますので、奉仕活動に支障をきたす、ということです。
ところで、クラブの会計というのは、本会計と奉仕会計との二本立てになっています。本会計は、クラブを維持運営するためのお金の出し入れです。会員の年会費や入会金などが収入で、その一部はRIや地区へ納め、大半はクラブの運営経費として使われます。例えば、例会場の利用料や食事代、会員への記念品代、事務所の賃料や人件費などです。
こうしたお金の出入りとは別に、各種奉仕活動についてのお金の出入りが計算されていて、これが奉仕会計になります。その主要な収入源はスマイル収入です。このお金で、社会奉仕や新世代奉仕などにお金をつかっているわけです。
こうした二本立ての構造になっていますから、奉仕活動を行おうとすれば、必然的にスマイル収入が必要になってきます。スマイル収入が少なければその分活動も縮小せざるを得なくなっています。
もしスマイル収入がゼロでも、年会費から必要経費を差し引いて、余った余裕のある分だけを奉仕活動にあてればよい、という考えも成り立ち得ますが、それはいかがなものでしょうか。
私が入会してから、子供のための雅楽や、職業奉仕の冊子、最近のものとして境川の清掃活動などが印象に残っています。まだまだたくさんあります。スマイル収入があるから、こうした幅広い活動が出来る訳です。
また当クラブではインターアクトや宇宙少年団支援など、外部の団体にも責任を負う立場にあります。これも奉仕会計から出るものですから、スマイル収入が頼りになります。やはり、スマイルあっての当クラブの奉仕活動、ということがいえると思います。
今回、当クラブ創立時から現在までの奉仕会計を一覧にした資料をお配りしました。スマイル収入の状況がわかるようになっています。
収入の部の中の繰入金には内容の変遷があります。設立2年目の1993年度から1998年度は会員の誕生日、配偶者の誕生日、結婚記念日の3回×4000円=12,000円として、全会員から年会費と一緒に集めていました。2000年度からは本会計からの繰り入れをするようになります。(粗食分)とあるのは通常の食事より1000円安くして、注文するお弁当の数を掛けて、それを12か月分集めたものです。
ベルヴィのときに月に1回、カレーや丼物のときがありましたが、このときに1000円浮かせて、その分を奉仕会計に回していたということです。2004年度からは、粗食分のほかにも本会計から奉仕会計へ繰り入れをするようになります。その後粗食はなくなりましたが、本会計から奉仕会計への繰り入れということは続いています。
支出の部ですが、三大奉仕と新世代奉仕を合わせたものを一項目として奉仕活動への支出額を表示しました。当初新世代奉仕はなく、備考欄にあるように宇宙少年団への支出は2002年度から、インターアクトへの支出は2003年度から始まっています。そのほか奉仕会計にはロータリー財団や米山奨学会、周年事業積立金への支出もありますが、メインの支出は奉仕活動です。
支出の内容についてもいろいろお気づきの点があると思いますが、三大奉仕+新世代が全体的にみますと以前よりも大分支出額が増えているということが挙げられます。昔は周年事業積立金に100万円位まわして、奉仕活動は100万いかない年が多いのですが、近年は周年事業積立金が30万とか50万円とかに減り、奉仕活動の支出は200万円前後になっています。これは、社会奉仕活動の規模が大きくなったことや、新世代の宇宙少年団やインターアクトを始めたことが、活動費用増額の理由かと思います。
そして、これらは現在当クラブの主要な活動となっています。これまで通りこうした活動を継続しようとすれば、スマイル収入はどうしても必要になるということです。ゼロにするわけにはいかない、ということが言いたかったわけです。
次に、これほどスマイル収入がロータリーの奉仕活動に不可欠のものであるにもかかわらず、なぜ何の規定もないのかということについて考えてみたいと思います。
私は何度かプロテスタントの教会の礼拝に行ったことがあるのですが、そこでの式次第が興味深いものがあるのでご紹介します。
礼拝では讃美歌を歌ったり、主の祈りというものを皆で声を合わせて唱えたりし、また聖書の一部を朗読したりします。またその時時の世界各地の紛争や、身近な問題をとりあげてそれについてお祈りをします。こうした一通り決まったプログラムのあと、その日のお説教が牧師さんによってなされます。
お説教は30分位あります。そのあとまた讃美歌を歌い、献金の入れ物が回ってくるので思い思いにお金を入れます。またその教会にその日初めて来た人があるときは、名前や住まいなどを皆に紹介します。最後に連絡事項をして終わりです。
賛美歌を歌う、お説教、献金、ゲストの紹介・・この式次第、何かに似ていると思いませんか。ロータリーの例会です。
讃美歌にあたるのはロータリーソングや今週の歌です。主の祈りや聖書の朗読に該当するものは、先日IMでやったようなロータリーの綱領の朗読でしょうか。祈祷は会長報告、お説教は卓話ということになろうかと思います。参加者の紹介はビジター紹介です。それで献金にあたるのが、スマイルです。
これはあくまでも私の推測ですが、ロータリーの式次第やスマイルといったものは、キリスト教の精神がベースにあるのではないでしょうか。
ここで、なぜスマイルについての規定がどこにもないのかという話に戻します。アメリカなどキリスト教の精神にもとづく社会では、礼拝で毎回献金をするように、ロータリーでのスマイルも献金のひとつであり、当然の行為で、あえて規定にいれるまでもない、ということなのではないかと思います。スマイルは、例えば食事をしたりするのと同じように、規定がなくても自然にそうするものだと、という考えなのかと思います。
日本ではどうでしょうか。日本人にはそのような献金という発想は一般的にはなかったと思います。何か良いことがあったときは内祝いをするということはありますが、あくまでも限られた人間関係でのことです。自分がよく知らない人のためにお金を出す、という習慣はなかったのです。漠然としたものにお金を出すというのに多少抵抗感があるのではないでしょうか。
大阪ロータリーで始まって、続いてきたはきたけれど、残念なことに日本人である我々には、いまひとつ、献金ないしスマイルをするということが浸透していないと思います。毎回毎回スマイルをしてくださる方は非常に少ないのが現状です。そのためにスマイル基準を作って促したり、スマイル委員会をもうけたりしているわけです。
ただ本来の姿は、何のスマイル基準がなくても、スマイル委員会がなくても、当然のように毎回毎回、皆がスマイルする、ということなのだと思います。ロータリーにスマイルの規定がないのは、そのことを意味していると思うのです。
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