相模原グリーンロータリークラブ
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第759回例会週報

2008-09週報目次
◆「e-Tax(電子申告)の普及に向けた取組について」
相模原税務署法人担当副署長 山下正美 様

1 税務行政を取り巻く環境の変化と対応
 税務行政を取り巻く環境は、少子高齢化やIT化、グローバル化の発展等に伴い、申告者数の大幅な増加や課税・徴収事務の複雑化により困難なものとなってきている。
その一方で、行政のスリム化のための定員削減が国全体として進んでおり、税務においても引き続き厳しい対応が求められている。
 したがって、限られた予算と人員の下で、引き続き国民の負託に応えていくためには、国税の職場においても経費の節減に努力するとともに、事務の効率化・簡素化を図っていくことが喫緊の課題となっている。

(1)対応1「内部事務一元化」
上記の要請に対応するため、国税庁では、平成18年から各税目の事務を標準化・共通化し、同種の事務作業を統合して事務系統横断的に一元処理することを目的として、「内部事務一元化」を試行的に実施しており、平成21年7月からは全国の税務署で本格的に実施される予定である。
相模原税務署は、「内部一元化」試行署として、一層の事務効率化に取り組んでいるところである。

(2)対応2 「e-Tax(電子申告)の推進」
e-Tax(電子申告)は、納税者にとっても、事務の省力化やペーパーレス化といった利便性の向上につながるものであり、また、税務当局側にとっても、申告者等の入力や発送・収受等の事務の削減、管理の一層の適正化を図る事ができる。

 このため国税庁では、法人消費税の中間報告、法定調書の提出、個人確定申告書の提出といった手続を中心に、e-Tax(電子申告)の利用を積極的に呼びかけている。

2 e-Tax(電子申告)推進の背景
(1)電子申告の国際比較
個人所得税の申告手続の態様を見ると、世界各国で電子化が進んでいる。
国別に言えば、オーストラリアと隣国である韓国では、個人所得税の80%が電子申告である。それよりも利用割合は下がるが、アメリカ、カナダでは、個人所得税の50%が電子
申告である。
各国とも、早期に電子化に取組み、着々と成果を上げているのが国際的な現状である。

(2)日本における電子政府・電子申告推進の経緯
翻って、日本国における電子政府・電子申告推進の経緯を見ると、平成5年に第3次「臨時行政改革推進協議会」が「行政の情報化を推進するための政府全体としての情報化推進計画を策定する」という提言をとりまとめたのが、電子政府構想の開始と言われている。今から15年前、細川内閣の時代である。
この提言を各種の研究会で揉んだ結果として、平成12年の森内閣の時代に、「行政改革大綱」が閣議決定された。この大綱によって、「申請・手続き等の電子化」と「総合窓口システムの整備」が、正式な政府の方針として決定された。
その後、IT基本法の施工などを経て、平成18年には小泉総理の主導の下、「IT新改革戦略」及び「電子政府推進計画」が決定され、その推進計画の具体策として、金融庁から国土交通省までの8省庁の具体的な電子化手続が策定された。
また、平成20年9月にはIT戦略本部による「新行動計画」が決定され、対象手続が71手続に絞り込まれた。
国税庁は電子申告の普及・推進に積極的に取り組み、平成19年度(平成20年3月末)のe-Tax利用割合は、全国ペースで16,9%を達成した。

3 e-Tax(電子申告)導入のメリット
 実際に電子申告を開始した法人、職業会計人から導入の感想を聴取したところ、テマ(人手)、ヒマ(時間)、カネ(金銭)の面の導入メリットについて、次のような感想が寄せられている。

(1)テマ(人手):機械化による人員削減→浮いた人手を他の仕事に
(2)ヒマ(時間):提出に係る時間の節約→浮いた時間を企業や営業に
(3)カネ(金銭):通信費・交通費の節約→継続的な経費削減

 また、電子によるデータ保存は、火災・盗難・事故、情報の整理・分類、保管場所(スペース)の節約の面で優れているとの声が寄せられている。

4 e-Tax(電子申告)は「電子認証」の取得から
 電子申告では本人確認や情報漏えいの防止等の目的で、紙ベースで使用される印鑑に代わって、デジタルによる判子(はんこ)として、「電子認証」を使用することとなる。
 一番オーソドックスな電子認証の取得としては、「住民基本台帳カード(住基カード)に電子認証を組み込む方法」と「法務局で法人の電子認証を取得する方法」がある。
 この2つの他にも、神奈川県や相模原市の発注工事において利用されている「NTTアプリエ」、「国際認証センター」、「帝国データバンク」、「日本商工会議所」、「日本電子認証」等の電子認証があり、これらの電子認証を利用して「電子申告」をすることも可能である。

5 おわりに
 今後は公共工事の電子入札はもとより、「民間対民間との取引」においても電子認証を利用し、取引を安全かつ迅速に行う時代が近い内に到来すると言われている。
 このような「電子社会」を想定して、いち早く「e-Tax(電子申告)」を利用することで、時代の変化に対応できる環境を整備しておくことが、個人、法人を問わず必要である。「電子社会」到来に対する早期の対応を図ることは、次世代に向けたより良き社会の基盤作りに?がるものである。