相模原グリーンロータリークラブ
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相模原グリーンロータリークラブ
第575回例会週報

574回 | 576回 | 2004-05週報目次
◆米山奨学事業について
小林 信二郎 会員

 今日の卓話は私が今年度 地区の米山学友委員を務めています米山奨学事業について、現在の活動状況と今後の問題点ついてお話したいと思います。
 皆さんもすでにご存知とは思いますが、まず初めに簡単に米山奨学事業の設立とその沿線について簡単にお話したいと思います。

 この米山奨学会は1952年12月東京ロータリークラブが米山梅吉氏の功績を記念し制度を構想し、翌1953年から「米山基金」と称する募金を始めました。そして、東京ロータリークラブの会員及び関係会社から260万円の募金が寄せられました。米山梅吉氏没後6年、日本のロータリーが国際ロータリーに復帰した3年後のことです。当時の日本のロータリアンには「平和日本」の理解を世界にうながすという願いがありました。アジアの発展に必要とされている学問、及び技術指導者の養成をするとともに、平和を求める日本人と出会い、互いに理解し合う関係を築くことを願い、外国人の留学生を対象とした奨学金制度が設立されたのです。

 米山梅吉は日本ロータリー創立の人ですが、一流の業界人であるとともに、まさに奉仕の人であったことは、ロータリアンにとっては周知のとおりです。「何事も人々にしてほしいと望むことは人々にもそのとおりにせよ」とは米山梅吉氏の願いでもあり、氏の生涯そのものであったと言えましょう。

 そして1960年「ロータリー米山記念奨学会」と改称し、1967年に「財団法人米山記念奨学会」となって現在に至っています。この「ロータリー米山記念奨学会」は日本ロータリー独自のものです。1972年にカウンセラー制度を設置しました。これは、人生経験豊かなロータリアンが留学生一人一人の心のケアを図り、ロータリーの精神と係わり合いの中で留学生の心を育んでいく制度で、米山記念事業の要です。

 「米山奨学生」は、ロータリーの奉仕活動の一つ、ロータリー財団の「国際親善奨学生」と混同されやすいのですが、「国際親善奨学生」が、各国のロータリアンによって選考され海外に派遣されるのに対し、「米山奨学生」は日本のロータリアンが日本で学んでいる私費留学生を選考し、奨学生として採用しています。この米山奨学生への応募は、ロータリー.クラブの所在国の学生に限られていましたが、1998年からは全ての国.地域からの応募が可能となりました。

 米山記念奨学事業の目的は、「米山基金」創設以来の理念を引継いで「ロータリーの理想とする国際理解と相互理解に勤め、国際親善と交流を深めるために優秀な留学生を支援し、世界平和の創造と維持に貢献すること」です。現役奨学生と、奨学期間を終了した人達の組織「米山学友」は2003年現在、世界各国に1054人で、自国あるいは活躍国際社会の場で活躍しています。

 この米山奨学金の財政はロータリアンの寄付が支えていますが、厳しい経済環境と会員数の減少により寄付収入は近年減少の一途をたどっています。現在収入は約16億円、奨学金は17億円を超え、事業を推進するためには、年額20億円が必要ですが、不足分は奨学別途積立金で事業費を補っています。またこれ以上別途積立金を取り崩さないために、奨学金支給額と採用奨学生の数の減少という方向を理事、評議委員会が打ち出しました。

 2004年の奨学生は1002人で、2004年現在までの累計奨学生数は11,542人となっています。そして2003年までの統計では96カ国からの留学生に支援しています。
これらの奨学生達は「奨学期間中にロータリーの例会や奉仕活動に参加することによって、日本の文化、習慣などを学び社会参加と社会貢献の意識を育て、将来、世界平和の創造と維持に貢献する人物になること」が期待されています。

 米山奨学生の選考基準は「優秀性」が最も重要視されています。ロータリーアンが米山奨学生に求める優秀性とは次のように定義されています。
〈学業〉 
 学問に対する研究の目的・目標を明確にし、研鑽を重ねてその成果をあげる努力をする。
〈異文化理解〉
 異なる文化・習慣などを理解する努力をする。
〈コミュニケーション能力〉
 言語のみならず人間関係における円滑なコミュニケーションを築き、事故の確立と共に他者を受け入れる柔和な姿勢を持つ。
〈地域交流・ボランティア活動〉
 社会参加の一つとして地域との交流やボランティア活動等に関心をもつ。

 そしてこの優秀な学生を奨学生とするために、2002年度から大学推薦制度を開始しました。米山奨学生となるためには、地区で指定する大学の推薦を得ることが必須条件となりました。この新制度については2002年3月のアンケートでは大学推薦制度を導入してよかったという意見が76%、一部改善の必要ありが14%、その他10%、良くなかったは0%という結果が出ています。

 今年度2004年の1002人の米山奨学生の国別の割合は
中国     45.9%  460人
韓国     20.6%  206人
台湾      9.8%   98人
ベトナム    3%    30人
マレーシア   2.5%   25人
インドネシア  1.9%   19人
その他    16.4%  164人
となっています。
 最近の日本に在留する留学生全体の傾向として中国からの留学生が大幅に増加し、2002年の統計では全留学生95,550人のうちの82.3%を占めているそうです。

 現在米山奨学生の採用は「各地区の採用において1カ国が過半数を超えないことを目安とする」となっていますが国際割合、米山奨学事業の目的、優秀な学生の採用といった要素の折り合いをどのあたりに置くかが、今後の課題となっています。

 私の私的な意見としましては、本来この米山奨学生事業は「世界に『平和日本』の理解をうながす」といった奉仕理念から創立された事業であり、日本で学んだこと、経験したことを生かし、『平和日本』を留学生が自分の国あるいは世界に伝えるという本来の目的を再考する必要があると考えます。

 勿論「学業優秀」な奨学生を米山奨学生として採用することは大前提ではありますが、現在一カ国からの―具体的には中国からの留学生が約半数近くを占めている現状は、ともすると本来の目的から離れた事業になってしまう危険性があるように思われます。優秀性の選考基準の中にある「異文化理解」「地域交流、ボランティア活動」といった学業のほか、能力の優秀性も重要視して奨学生を選考すべきかと思います。

 なぜなら、米山奨学生である留学生が、学業の達成のみならず、日本の文化を理解し日本の地域に親しみをおぼえてこそ、米山奨学生事業の目的を達成できるのであり、そのために私たちロータリアンは奉仕の精神と寄付でこの事業を支えているのですから。現に、米山の委員をしている私に 現在ロータリー・クラブが存在しない中国1カ国からの奨学生が約半数を占めている現状に対し、反対意見を言われる方もいますが、私も同様な思いを持っています。

 今後この「米山基金」以来51年、「財団法人米山記念奨学会」の創立以来37年の日本ロータリー独自の奉仕事業をさらに充実させるためには、多くの会員の建前(たてまえ)ではない本音の声を聞き、理解を得て、時代に即した米山奨学金事業を展開していくことが求められていると思います。