当2780地区「職業奉仕アンケート」(2002/4)の結果について
コメントいたします。
その前に、もう一度、職業奉仕の再確認をしよう!
[1]まずは、『初心を忘るべからず』ということです!
何故、くどくどと、職業奉仕が強調されるのか?
それは職業奉仕が「ロータリーの心」の原点だからです。
ロータリーの心を再確認すること、「初心を忘るべからず!」です!
そこで、職業奉仕(Vocational Service)とは?
「奉仕こそわがつとめである」という見解がもっとも簡明か?
それは『 He profits most who serves best!』の確信に尽きる!
"profits"はラテン語のprofectus(前進)が語源である。
お金が儲かることのみを意味しない。もっと全人的で大きな成果を!
正に'Mankind is our business!'でしょう!
職業奉仕とは多くの人々とロータリーの理想を「分かち合う」こと。
進軍ラッパの響きのごとく、鼓舞しあうもの、それは運動となる!
まさに、「ともども人生の質的UP 」を目指すロータリー運動であります!
公には手続要覧(1998年版)75P.〜を参照。
職業奉仕とは、「平生の心がけ」と理解する!
個人生活、事業生活、社会生活という多面的な人間の有り様の中で、その
中心が職業(事業生活)であるということ。
「入りて学び、出でて奉仕せよ」( Enter to learn、Go forth to serve.)
「奉仕団体ではなく、奉仕する人の団体」とすればロータリーにおいて、
「平生の中心たる職業での奉仕」が基本となるのは自明の理であります。
例会の場、クラブ単位の各(社会)奉仕もその温床の役割を担うわけです。
[2]職業観、職業の実態の変化にも注目!今の時代で考えよう!
変化するもの、不変のもの!当初のロータリーでは天職イメージが強い。
天職とは(代々)定められた仕事を、神与として発展、永続化すること!
ところが今の高度産業化社会では、大企業を軸として職業はBusiness!と
意識される。サラリーマン社会である。またハイテク(人間不要?)社会
でもある。この違いは、背負わざるをえない!
大きな流れとして「労働から仕事」、「仕事とともに余暇」、「意味ある仕事
の模索」「社会起業家としてのボランティア」等がある。
現状では職業観、職業の実態が様々! 実態に即した思考が肝要!
今は単なる勤勉主義では通用しない。意味ある仕事を模索する時代!
仕事が転々、流転することも必要!柔構造の労働体制、仕事の在り方時代
20世紀初頭、それもアメリカの職業実態とは大きく異なる。
(マックス・ヴェーバー自身もすでにその職業観、倫理の変化を予言!)
[3]競争から共創へ!
今や、無限の経済成長は有り得ない! 持続的人間社会の模索!
「地球はひとつ、人類皆兄弟!」であるとするならば、闇雲な競争社会は
成立しない。コミュニティー概念を意識せざるを得ない。
競争を意識し過ぎない!→ 競争から共創へ! ゆったりと生きる時代!
技術革新、自由主義、経済成長のもとで20世紀を邁進した人類!
しかし急成長は、同時に地球規模での限界(公害、資源枯渇、南北問題等)
を背負うことになる。「人類皆兄弟!」を模索せざるをえない。
「人類皆兄弟!」、新しいコミュニティー概念はロータリーにとっては
馴染みやすいものであろう。 時代の流れを先取りできる素地あり!
【当2780地区アンケートの集計及び感想】
→職業奉仕についての当地区、各RCの感想を求めた。
職業奉仕はロータリー運動のなかで如何に位置付けされているのか?
クラブとしての職業奉仕は如何に?等
地区内69RCの内、64 RCから回答。個々の質問に不明回答を含む。
(1) 今年度のクラブフォーラム実施状況?
実施済み―33RC、実施予定―16RC、実施せず―15RC
(2) 職業奉仕は分かりやすいか?
分かりやすい―26RC、分かりにくい―31RC、判断できず―7RC
(3) 社会奉仕との区分け?
全く別―20RC、社会奉仕の一部―29RC、区分けできず―15RC
詳細は集計結果概要レジメ(中間報告)を参照のこと。
以下、私見でありますが感想を列挙したいと思います。
《1》 職業奉仕はやはり分かりにくい!
個々のクラブ、職業奉仕委員長(おそらく会員間でも)で、ばらつき
がかなりある。全く気にならないロータリアンもいれば、訳が解らな
いと感じている方も多く見られる。
もちろん「クラブ単位での職業奉仕」とは一体何なのか?はあるが、
当然に無視してしまえば気にならなくなるのであろう。
一業一種の崩壊もじわじわ影響してきている。
しかし「何故、殊更に、職業奉仕を強調するのか?」が解らない方が
最も多いと思われる。
これは「ロータリーとは何なのか?」の本質に関わる大テーマである。
この疑問については、ロータリーを理解することが早道である。
職業奉仕とは、「平生の心がけ」と理解する!
確かに職業観念、実態の変化の中で実感湧かず!はある。
「奉仕団体ではなく、奉仕する人の団体」とする、ロータリーにおい
て、日常生活が奉仕の本番であると理解すれば良い。
職業奉仕の心は、ロータリーの奉仕の原点、初心であると理解する!
《2》 ロータリーのメンバー、それともクラブのメンバー?どっちが先?
自分のクラブライフがロータリーの全ての如き受けとめ?
運動としてのロータリーが見られない! たこつぼロータリアン?
今の各クラブ例会が本当にロータリーマインドの修練の場になってい
るかどうか?
ロータリーの特徴を自分の言葉で言えるか?
きちんと、自分なりのロータリー観を築こう!
狭小、曖昧なロータリー観多し!
仲良し、親睦、異業種交流(仕事の役にたてる)クラブの会員に留
まっていないか?
ともに奉仕の志を磨きあってこそ、程度の高い友情、親睦が生まれる!
ロータリー運動が倫理運動であることに違和感を覚えたら「ロータリ
ーを止めた方が良い」。
馴れ合いと錆びた現実に安住するのは止めよう!
「足を引っ張りあうのではなく、ともに手を引きずり挙げて高みを目
指す」のがロータリーでありたい!
But 合わないものは仕様がない!
平生の奉仕、職業奉仕がしんどく、煩わしく感じたら原点確認要!
また「相応の奉仕を実行できる余裕」が持てなくなったら、自分で
身始末をつけざるをえない。
その時は、ロータリーを去ろう! 潔く去ろう! 復会はありえる!
ともかく、ロータリーが全てではなく、また絶対でもない。
アンケートで散見された、『競争(利益)を倫理に優先させる』という
「本音」は、当然、ロータリーには馴染まない(道徳律第六条)。
今、実行しているそのままが、各人の「倫理そのもの」であろう!
求める人にとっての倫理である!求めなければ何も無し!
道はいろいろ! 無理せず、ロータリーを止めるのも一つの道である。
《3》 思い上るな! ロータリアン&ロータリークラブ!
我々のなし得る「社会奉仕」はどの程度のものか?
その程度をわきまえよう。
さらに言えばロータリーで行っている奉仕の数々、どれだけ意義、意
味を込めて実施できているのか?
決議23―34が達観している如く、ロータリー(たかだか週一例会、
年数回奉仕、財布がいたまない程度のスマイル原資&気持ち)の
クラブでの奉仕には限界がある。
だからこそ、日常生活(=職業?)が肝要なのです。
さらには、クラブ単位でも、「心のこもった奉仕計画」がどれだけある
のであろう?
前年同様に、仕事をこなす中で、その奉仕事業の意味が曖昧化して
いるものはないか?惰性に陥る危険あり!
何故、何の願いで「交換学生制度」はあるのか?実態、今後の展望は?
何故、何の願いで「ライラ」はあるのか?実態、今後の展望は?
何故、何の願いで「GSE」はあるのか?実態、今後の展望は?
何故、何の願いで「ローターアクト」はあるのか?今後の展望は? Etc.
もっと謙虚に、もっと心をこめてロータリーと向き合おう!
「意味への意志」が肝要である!
《4》 アンケート結果に見られる当地区での職業奉仕の有り様。今後の
留意点!担当委員長等として何を為すべきか?
(1)クラブフォーラム
アンケート結果では各クラブとも例年並みか、例年以上に取り組んで
おられるのではないか?大体60%位のクラブがフォーラム、通常例会
での関連卓話(委員長が担当、地元実践経営者の卓話等も良い?)で
職業奉仕を取り上げている。
時期は、月間に合わせて開催された地区職業奉仕セミナー後が多い。
その他、ロータリーの綱領、職業宣言、四のテスト、倫理訓等を
ロータリー運動の歴史にからめて再確認、再認識する取り組みに
効果があるようです。
竹内ガバナーの推奨もあり、1999/2000年度当地区職業奉仕委員会
の取りまとめた小冊子「職業奉仕、その理解と実践のために」がかな
り 活用されているようです。特に2680地区の深川純一PGの「職業
奉仕 の原理とその実践」が定番のテキストになっています。
※ 深川さんは1930年生まれの伊丹RC会員。同市で弁護士を開業、
人権擁護委員等の公職、大阪学園理事長等のお仕事をなさって
います。法曹関係の方ですからその御説明はまことに要をえて、
きちんと整理された職業奉仕論を展開されています。
また10周年の節目に、クラブ(職業奉仕委員長)として今までに
やれたこと、やれなかったことを、歴代委員長中心に、振り返りつつ
話し合ったクラブもあります。良い取り組みだと思います。
さらに踏み込んでテーマ設定してグループディスカッションをされた
クラブもあります。(産業廃棄物の処理のあり方等)
ともあれおおまかには認識されている職業奉仕!しかし各会員の認識
度合いにはかなりばらつきがあるのではないでしょうか?
折にふれて、お互いを再確認することに意味があると思います。
(2)クラブとしての職業奉仕
これは各クラブとも手探り状態です。
よくあるパターンですが、「優良従業員表彰―8RC」、「クラブ内外の職場
訪問―15RC」、「四のテストの唱和―3RC」、「会員の実践事例紹介―
3RC」等が実施されました。
また「地域の子どもに職業体験―3RC」、「NGO等、職業ボランティアの
体験談を拝聴する―2RC」も行われました。
それ以外の多くのクラブでは、"あくまで職業奉仕は個々人の取り組み"
としてクラブとしての職業奉仕は行わないとの方針でありました。
これまた、「各クラブ各様」で良いのではないでしょうか?
(But きちんとしたクラブ方針があるならば!)
※「クラブとしての職業奉仕」もロータリーの歴史のなかで位置付け、
自分なりに理解することが肝要です。参考資料として「ロータリーの
友」の時系列的な通読をお勧めします。
過去20年間の「友誌」10月号を通読して下さい。
特に1987年10月号のチャールズC.ケラーRI会長の「職業奉仕月間
に思う」を発端に、1988年以降の「職業奉仕の新方針について」の
各特集記事をお読み下さい。
(2000&01/10月号の「友に載った職業奉仕の関連記事」を参照)
いかなる願いでセットされ、日本のロータリーで如何に受けとめられ、
どのように模索&実践(環境保全、阪神淡路大震災、対地域、対青少
年、近年は就職難から雇用?)されてきたかが理解できると信じます。
友誌はクラブのベテラン会員でお持ちの方がおられると思います。
なければ東京芝のロータリー文庫にお出かけ下さい。
なお1986年10月号、濱川金兵衛氏の
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神とロータリーの理念」。
同号佐藤千壽氏(氏は障害者雇用でも多大の奉仕をされている)の
「隣人愛という原点」。 1990年10月号岡村俊一氏の
「諸外国と日本の労働者雇用の現況―職業奉仕の声明に関連して」。
1999年10月号岩崎稠氏の「職業から感動を」。
また10月号ではありませんが1980年5月号(2001/10再掲)での
チェスリーR.ペリー氏の「職業奉仕はいかにして生まれたか」。
1974年4月号での神守源一郎、直木太一郎、斎木亀治郎各氏の対談
「職業奉仕はまぼろしか?」等は興味深い記事でありました。
※ 「倫理」概念の再確認も一応やっておく!
入門書―「現代倫理学入門」、加藤尚武著、講談社学術文庫が良い!
その他、応用倫理の分野で、環境、生命倫理等資料は多い!
《5》 職業奉仕―我々の目指すべきスタンスは?
→ "塵々三昧"(じんじんざんまい)
そしてより良きロータリー、地区、特に「自クラブづくり」!
(1) "塵々三昧"(じんじんざんまい)
碧厳録第五十則、従容録第九十九則の本則
「僧雲門に問う、如何なるか是れ 塵々三昧、門いわく、鉢裏飯桶裏水」。
(ハツリノ飯ツウリノ水)からの言葉であります。
道元禅師の言葉で言えば、「眼横鼻直」と同理でありましょう。
桶のなかの水、これはお茶を飲むこと、鉢裏の飯は御飯を食べること。
要は喫茶喫飯時のことである。これは日常茶飯事を意味する。
そして食事、洗顔、掃除等さまざまな日常のこと、簡単至極なこと、
これを塵々とします。
ところで本当のことがわかるのに、最も大切なことは真剣になることで
ありましょう。
人間が真剣になる方法は二通りあるそうです。
<A> 生死の非常な経験をすること。戦場、大病、失恋等。
<B> 最も簡単なことを徹底して実行すること。の二通りです。
簡単なこと、平生の当たり前を、心を込めて、徹底実行することが、
ここでの「塵々三昧」であります。
そして「平生の当たり前のことが、よくわかり、そのことが立派に
実行できることが悟りそのものである」と教示します。
私はロータリーの職業奉仕もこの心持ちで良いと思う。平生の心がけ、
日常の仕事への心がけを正していれば必ず真の道が開けると信じるもの
であります。
(2)自分のクラブのロータリー的整備と、より良き風土づくりが第一歩!
先輩ロータリアンが、必ずしも「良いロータリアン」とは限らない!
自身の数十年後を自覚すればよい。私達もわからない!
ともあれ、先輩達で、惰性で年数を重ねた方も多いのでは?
RI、地区でも悲しいトラブル、やりとりが散見される。
自クラブでも、地区でも、ロータリーのリーダーは厳選が必要!
威張る人、肩書き(のみ)大好き人間、人品の卑しい人達は敬遠?
ロータリー内でも工夫が必要 →『脚下照顧』!
草の根ロータリアンって何? とても変な言葉ではないのか?
「ガバナー様」、「地区内来賓」等の表現もロータリーらしくない!
地区行事での、主役は新会員&一般ロータリアンと考えられないか?
地区役員は、黒子として、極論すれば、後ろの席に位置してはどうか?
よっぽど奥ゆかしい、尊厳あふれる姿勢です。
ロータリーで、地区で、そして自分のクラブで「味のある改善」を
しよう! あるべき「ロータリー風土づくり」です!
「良貨が悪貨を駆逐する」状態にしよう。
特に自クラブで、「互いに尊敬しあえる、より良き風土づくり」!
ロータリーの根本(単年度主義、皆公平、拝金・権威打破)を
踏まえれば可能なはず!
「その気のある人」、「やる気のある人」中心の運営で良い!
心は形を求めます!
若手の積極活用は当然!
経験的に言えば40才台が活力の中心!
その上で、老壮青(甘味・苦味・渋味!)のハーモニーを図ろう。
「年令構成」の改善は必須!意識して、新しい血を受け入れよう!
その点、「未来なきクラブ」もあるのでは!改善ニーズは多い。
重畳的テリトリーが多い中で、自クラブの在りようを工夫しよう。
いつでも自クラブの特徴、長所、味わいが言えるようになろう!
自分のクラブのロータリー的整備と、より良き風土づくりが、
ロータリー改善の、第一歩!です。
ロータリーに観客席はない!すべて自分の問題!実行あるのみ!
(2002/05/22 原 幹郎)
|